1980年代はじめ、香港にハマっていたことがありまして、今でも私の実印は香港で彫ったものだったりします。マンダリンホテルでスーツを仕立てたことも。
食べたり飲んだりする以外には、九龍半島側の深水埗には生きたヘビ問屋街と電脳街があって、その当時はAppleIIの海賊版ソフトを買いにホテルから地下鉄で行っていました。
最初に香港に行ったときにお世話になったのが山口文憲が監修して宝島社から出版していた黄色い表紙のガイドブック。おなじ著者の「旅の雑学ノート」あたりも読んだのですが、香港の裏道を一人でまわるようになったのはこのガイドブックのおかげです。沢木耕太郎の「深夜特急」はもっとずっと後です。
当時の香港はワンチャイにベトナム戦争の名残のような古びたキャバレーが残っており、空港の近くには九龍城があって不気味さには事欠くことはありませんでした。
山口文憲の本は映画「慕情」をすでに観たことが前提となって書かれています。第二次世界大戦が終わって数年後の香港を舞台にしたウィリアム・ホールデンとジェニファー・ジョーンズのラブストーリー。今週、六本木ヒルズで上映していたのでふらっと行ってみました。TOHOシネマのスクリーン2は横幅10メートル以上あります。
もちろん、デジタル上映となっているのですが、それでもガラガラの客席の真ん中に座って観る1955年製作の映画は格別の色合いで、当時の雰囲気もつかの間味わえて本当に良かったです。