2013年3月1日金曜日

アーマッド・ジャマルに救われた日

昨年8月と12月に「アナログレコードで聴くジャズの魅力」のセミナー講師をやりました。講師といってもレコードをかけて解説をする気楽なもので、系統だって聴くのは自分でも珍しく楽しい経験でした。

 ピックアップしたレコードは1930年代のベニー・グッドマン、ビリー・ホリディから80年代のマルサリス兄弟くらいまで。90年代に入るとジャズはほとんどCDでリリースされるので、レコードではざっと50年間の変遷を聴くことになります。 

普通であれば古いレコードから聴いていくと思いますが、セミナーでは試しに80年代から遡ってかけていきました。すると自分でも予想してはいたんですが、50年代に入るとジャズはぐっと面白くなるんです。レコードから流れてくる時代の空気感が圧倒的に違います。 

セミナーが終わったあと、ハタと考えてしまいました。これからオレは昔の音源ばかり聴いて生きていくのか?と。別のブログで書いたことがあるのですが、落語は志ん生しか聞かないのと同じく、ジャズも過去にすがって生きていくのかなあと。(ちょっと大げさですが) 

この思いはブラッド・メルドーを聴いてますます強くなりました。当代随一の人気を誇るピアニスト、ブラッド・メルドーを聴いても何も入ってこない自分は、どこかで何か間違ったのではないかと思ったのです。

レコードだけじゃなくて、先月は新宿ピットインに寄って人気・実力ともトップレベルのテナー奏者を聴いたんですが、やっぱりリピートしようとは思わない。唯一楽しみにしているのは年に2回、80才になった五十嵐明要さんのサックスを聴くことで、それはやっぱり時代の空気感としかいいようがないのです。

で、本題なのですが、最近インターネットラジオ局を回していたら、「アレッ?」と思う演奏があったんです。夜はもっぱらバド・パウエルしか聞かない私が「アレッ?」と。それがアーマッド・ジャマルでした。 

インターネットラジオ局でたった一曲聴いただけのアーマッド・ジャマルに救われたような気がしました。これからの生き方に1つマーキングをしてもらった感じです。